アパッチ野球軍考察ブログ

1971年〜72に放映のアニメ『アパッチ野球軍(原作:花登筐 漫画:梅本さちお 制作:東映動画)』について語るブログです。

「作品の歴史的価値を重視し、現存する原版のとおり収録してあります」という言葉にどれだけの信憑性があるのか

私はアパッチ野球軍のDVDを元に考察を行っています。生まれる前の作品であり、残念ながら本放送を見ることはできませんでした。

このDVDは、アパッチ野球軍唯一の映像ソフトです。

過激な描写や台詞が多いとされているこの作品において、DVDの冒頭では

「作品の歴史的価値を重視し、現存する原版のとおり収録してあります」

という旨のテロップが流れます。

 

繰り返しの主張になりますが、

「過激な差別的表現で放送禁止になったという事実はあり得ない」

と感じました。台詞の中には「めくら」「土方」など今では使われなくなった言葉もありますが、製作時の1970年代という時代では一般用語の範囲内でした。

実際には再放送が頻繁にされていたという事実もあります。作品自体の存在が封印されたという話には根拠がありません。

 

ところが最近「作品の歴史的価値を重視し、現存する原版のとおり収録してあります」という前置きをどれだけ信じていいのか、と思わせる事件がありました。

 

ドラゴンボールZBlu-rayソフトにおいて、中指を立てて挑発する表現がデジタル修正された問題 https://togetter.com/li/1298872

 

ドラゴンボール復刻版、中指立てた描写カット 「原版のとおり収録」と説明していたが... | ニコニコニュース https://news.nicovideo.jp/watch/nw4698622

 

鳥山明原作の人気アニメ「ドラゴンボールZ」において、中指を立てて挑発するシーンがカットされた問題です。

「作品の歴史的価値を重視し、現存する原版のとおり収録してあります」という注意書きがあったにもかかわらず、実際には修正がなされていました。

そしてドラゴンボールZの他にも、同様の修正がされたアニメがあるということでした。

 

この事は、映像ソフトの資料性に疑問符がつく出来事となりました。私はアパッチ野球軍は本当に放送できない内容だらけのアニメなのか、という事を知りたくてDVDを視聴していました。

ところが「作品の歴史的価値を重視し、現存する原版のとおり収録してあります」という注意書きがありながら実際は修正がされている、という事例が複数あるならば、私が見たDVDと本放送の内容が異なっている可能性もあります。

つまり私が主張していた「封印作品にされるほどの差別的な表現は無い」という説に根拠が無くなります。

(仮に私が知らない差別的表現が使われていたとしても、アパッチ野球軍は再評価されるべき作品という考えは変わりません。差別や偏見に打ち勝ち、荒んだ子どもたちの心に夢を与えるという作品だからです。)

 

アニメやその他の表現物は鑑賞して楽しいのはもちろん、研究の対象でもあります。

仮に「日本のアニメにおける侮蔑的表現の研究」という事をしている人がいたとします。そのときに「作品の歴史的価値を重視し、現存する原版のとおり収録してあります」という文言がありながら、実際は修正だらけというソフトが蔓延していたらどうなるでしょうか。それは研究が大きく頓挫することを意味します。

また過去の作品をソフト化するに当たり、差別的表現を断りなく一切排除したらどうなるでしょうか。それは過去に謂れのない差別に苦しんだ人たちの存在を消すことにもなります。

「差別も侮蔑も一切存在しなかった世界(日本)」が大昔から存在している事になります。それは真実でしょうか。

 

今回の事例は「作品の歴史的価値を重視し、現存する原版のとおり収録してあります」という文言の信憑性を失わせる事になりました。その点で表現規制が問題になるケースでも、特に悪質な例であると感じます。